◇◆  ファンシー ストーリー第16話  ◆◇


情熱の炎は燃えさかったか!

トリノ五輪、閉幕。
数々のドラマを残して終りましたが、皆さんはどのようなご感想をお持ちでしょう。
土曜の夜のアルペン・回転は本当に残念でした、アルペン50年ぶりのメダルかと最後の最後までワクワクドキドキでしたね。
しかし、積雪やスキーにはほとんど無縁のウッキー、
アルペン競技で転倒した瞬間に飛び散る雪があんなに綺麗だったとは・・・という新しい感動を知りました。高記録、自己ベスト、表彰台など等、いろんな思いが一瞬にして雪とともに飛び散るような悲哀、そして散る前の美しい瞬き。いくつかの要素で構成される雪上のファンシーですね。
大量のダイヤメレをぶち撒けてもメチャ綺麗でっせ!
あとはホンマ悲惨やけどね。

・ ・

princess

終わり良ければ全て良し、
もうほとんどメダルを諦めていた日本全土に突然のGOLD!
アッパレ荒川でしたね。
あの優美な演技と正確で難度の高いジャンプ、スピン、スパイラル。
アメリカの新聞には、『失敗しなかった競技者が1番になった・・』というような記述がなされたそうですが、贔屓目ではなく、そんなことはなかったと思いますね、上位3人が皆それぞれ完璧に近い演技をしたとしてもやはり荒川の1番は動かなかったように思います。
そして、日の丸が一番高いところにアメリカとロシアを引き連れて掲げられる中、君が代が流れる、こんな気持ちの良いことはございませんでしたね。
荒川さんが表彰台の一番高いところで君が代を歌っていたのにもウッキーは大きな感動!
しっかり見たか、クソNHKにfucking朝日新聞め、
お前ら、日の丸と君が代に文句あるのやろ、
オリンピックの表彰式は報道するな!!
スンマヘン、こういうことはまた別の機会に。

氷上のPRINCESS

さてさて、
荒川選手の金メダルが確定した金曜の朝7時過ぎからメディアは荒川一色、
流石にタフな精神力を持つ彼女は『金メダルは超多忙』と口では言うものの、元気な姿を常に保っていたのが印象的でございました。
日頃はあまりにしつこい日本の報道に辟易のウッキーですが、この日ばかりは何度も反芻、ホント何度でも見たくなる極めつけにFancyなスケーティングでした。

あとから考えるに、まさしく獲るべくして獲ったゴールド、
ウキ好みのストーリーいっぱい!
そのあたりのところを今日はちょっと書いてみようかと。

とかく地元が有利と言われる五輪の採点競技、
他国の選手にとって勝利への道は、観客に感動と共感を与え、大きな拍手と歓声を得ること。
そんな意味からフィギュアの演技での音楽は大きな比重を占めているように思います。

『トゥーランドット』
荒川の“優勝曲”、
イタリアの作曲家、プッチーニによる歌劇で、初演はミラノ・スカラ座、1926年ということです。

ご存知の方も多いと思いますが、求婚相手に無理難題をふっかける姫のお話です、

舞台は、古代中国の宮殿(紫禁城)。

トゥーランドットとは、美とクールな知性を兼ね備えた皇女。
その美しい姫に求婚する男は、彼女が出題する3つの問いに答えなければならない。解答できなければ死刑が待っている。
今日も挑戦に失敗したペルシャの王子が群集の喝采の中、刑場へと引っ立てられて行く。
西域の国の元王子・カラフは、処刑の様子を見に広場に現れた姫の姿にひと目惚れ、自らが新たな求婚者、挑戦者になることを宣言。

トゥーランドット姫は、何故に自分がこのようなことを始めたか述べる。
「異国の男性に騙されて絶望のうちに亡くなった美しい姫・ロウリンになり代わって世の全ての男に復讐する。」
そして出題、
問題1、毎夜生まれて明け方に消えるものは?
問題2、赤く、炎の如く熱いが、火ではないものは?
問題3、氷のように冷たいが、周囲を焼き尽くすものは?

これら全てに正答したカラフであったが、姫は結婚をいやがる。
カラフは姫に対して、
「それでは私も問題を出そう。私の名は誰も知らないはず。明日の夜明けまでに私の名を知ったら私は潔く死のう。」
と提案したのであった。

北京の街にはトゥーランドット姫の命令が下る。
“今夜は誰も寝てはならぬ。”

そしてついにカラフを知るティムールとリューが連行され拷問を受ける。
しかし、リューは口を閉ざし、衛兵の剣を奪い取って自刃してしまう。
姫の冷たい心はこの時、リューの献身を目の当たりにして大きく変化するのであった。
カラフは姫に接吻し、自分の名を告げる。
トゥーランドット姫は群衆の前に立ち、高らかに宣言する。
「求婚者の名は・・・『愛』です。」
デメタし、デメタし!

・ ・ ・

トリノの開会式で、かの有名なババロッティーが、この歌劇トゥーランドットのアリア『誰も寝てはならぬ』を歌いましたね。

イタリア、トリノの観衆は当然このトゥーランドットのストーリーと音楽をよくご存知で、3つの難問の正解も知らないはずはない。
皆さんお解りですか?

1は希望、2は血潮。

そして、3は?

氷上のプリンセス

そうですね、
荒川の見事な演技は、観客に十分過ぎるほど3つめの答えを意識させました。
彼女の持ち味である‘イナバウアー’(イナバ物置の名前みたいやけども)でスタジアムの感動は頂点に達したようでしたね。
演技終了直後のStanding Ovationが何よりもそれを物語っておりました。
荒川に対してヨーロッパのメディアは、
“Cool Beauty”
“Cool Princess”
などの称号を贈ったということです、訳も分からずにこれをそのまま伝えていた日本のメディアが多かったようですけども。
彼女のファーストネーム・静香も絵に描いたように舞台にピッタリ。
冷静な氷上の演技と控えめかつ格調の高い色香、観衆にストーリーを意識させる美しい舞い。
もうウッキーは感動に浸りきっておりましたね、おもわず溜息。

ところで、
反対に全く残念な、何しに出てきたのかサッパリ解らなかったのが安藤選手。
フリーの演技ではジャンプの失敗に次ぐ失敗、日本のオジサン族を大いに失望させてしまったようですね。ウッキーもオジサン族の1人やけども、彼女のどのへんがそんなにええのかよう分かりまへん。ホンマおっさんファンの多い彼女ですな。
ショートプログラムでの曲は、“戦場のメリークリスマス”、
もう20年以上前の映画ですね、大島渚監督作品。坂本龍一、デヴィッド・ボウイ、ビートたけしらが好演。確かにいろいろと考えさせられ感動もした映画であったことは事実ですが、何故に今この時に“戦メリ”なのか??(大島監督がこの映画を製作した時も同じことを言われたと記憶しておりますが) これが彼女にとって、そしてトリノにとって一体どういう意味を持つのか全く不明。映画を知っている日本のウキ世代になら受けることは間違いないですし、若い彼女なりに戦争の悲惨さと反戦を訴えたかったのかもしれません。しかし、イタリア人の多くがこの映画を知っているとは思えませんし、ストーリーを知ったところでテーマ(モチーフ)としては余りに重過ぎ暗すぎます。
それに“戦メリ”の負のイメージに合わせたのでもないでしょうが、あの真っ黒な衣装ね、デザインしたワダエミ、君のセンスの悪さは一体なんやねん!安藤さん独特の“キャピキャピ感”を全く感じなくさせてしまう最悪のトーン。
なんぼポテトチップスの食べすぎでコロコロ太ってしまったとは言え、技のキレで勝負する彼女があの衣装と曲ではアキマヘンな。
フリーの選曲はチョー最悪。
なんで“マダム・バタフライ”なんじゃ!!
あんた一体いくつや!?
‘娘十八、番茶も出ばな’
色恋に全く無縁でもないでしょうが、スケートに明け暮れる18歳がそうそうたくさんの恋愛を経験しているとはとても思えまへんわな。そんな彼女が、ヤンキーの船乗りと愛し合って捨てられるという長崎のお蝶さんを演じられるわけがない、出来たら怖いわ。
あの曲のノリで4回転なんてね、飛べる方がどうかしおる、あれでは男子ゴールドメダルのプルシェンコでもコケまっせ。

イタリアのフィギュアの観客は明らかに目が肥えております、今回痛感いたしました。元々ヨーロッパにはバレエとかオペラの伝統がある、とりあえずジャンプ成功させたらキャーとかワーとか騒いでくれる薄っぺらなアメリカとは訳が違うし、そのような欧州文化の一方的な輸入国である日本では考えられないほどフィギュアに対する関心が高いわけです。
安藤はヨーロッパの文化的な深みを全く理解せずにトリノに来てしまい、結局のところ、その文化に対する無関心は自分が日本人であることすら演じられなくしてしまったわけで、見ている方としては単に体の重そうな軽いノリの若者という印象が残っただけでございました。
あのあたりの感性をどうにかしないと安藤に未来はおまへんな。
ストーリー軽視と感じることへの鈍い反応、
ここらが安藤の敗因でありましょう。
名古屋の人、彼女に言うといてね。


さて再び“トゥーランホーマー”? えっ、2点追加、
わざとらしいね、すんまへん、球春や!
トゥーランスクイズっちゅうのもおまっせ、またまた2点追加、もうよろしいな。
もとい、
再び“トゥーランドット”、
高貴な女性が結婚の条件として無理難題を男に吹っかける、これは世界中にあるストーリーなんですね、言うまでもなく我が国にも“竹取物語・がくや姫”がございます。
トゥーランドットも元はと言えば、『千一夜物語』からの出典。オリジナル版は姫の問いの数も多くて大変!
たとえば、
問1、姫とその周囲の女性たちが似ているもの → 太陽と陽光、月と星
問2、護符に霊験を与えるもの → 文字
問3、2つの永遠の仇敵 → 生と死
問4、太陽を見たことない地 → 紅海の海底
・ ・ ・
といった具合に延々と続きます、メチャ疲れる・・・。
そのような長ったらしい謎かけ姫の話を趣き深いオペラに仕上げるのですから、やっぱりイタリア人はセンスあるねぇ。
出来たら登場人物の名前をもっと東洋的にして欲しかったですけどね。ちなみにこのオペラでは、皇帝に仕える3人の大臣が登場するのだそうですが、彼らの名前が“ピン、ポン、パン”というのはちょっとフザケ過ぎやないかと。こういうノリもイタリアなんでしょうか?! そう言えば、イタリアに滞在した記者が言うてましたが、ホテルのエレベーターが指定の階に止まらない、とかっていうのは日常茶飯事、しかし建築物としてのホテルは美しくて立派。このようなストーリーはイタリア中になんぼでもあるわけですね。
表面を糊塗したり細かい事に云々するよりも、本質的な部分での内容が重要ということをよく知っているということです。

その格調高いイタリアオペラの本質的な部分を自分のものにして、ほぼ完璧な演技に仕上げた荒川、
言葉不要のFancy Story!!!
トリノ市が属するビエモンテ州からフィギュア女子ゴールドメダリストに贈られることになっていたティアラはPRINCESSの舞いに相応しいもの、彼女のために準備されていたように思えましたね。


人は何に感動するのか、
それはもう決まっておりますね、ストーリーを感じさせるものに感動するのであります。背景のストーリーが深ければ深いほど感動も大きくなる。
ダイヤモンドも同じです。
感性を研ぎ澄まし、ストーリーを感じて、あるいは想像して、今いちどダイヤモンドを見ていただければ、これまでとはまた違ったカラーが見えてきたり・・・。

最後に、トゥーランドット姫と荒川のスケーティングのイメージをDiaで・・


燃えるように凍っている Princess

こんな感じでしょうか、
燃えるように凍っている Princess

Fancy な Torinoでございました。




◆ Back Number ◆
第20話 UKIカラーで綴った枕草子
第19話 古今和歌集ダイヤモンド語訳
第18話 2006W杯 × Fancy Color
第17話 That's Baseball
第16話 トリノの余韻
第15話 “The Aurora butterfly of Pease”
第14話 Fancy June ...
第13話 ウッキー夜話
第12話 『春のダイヤ人気番付』
第11話 2003年 南船場の秋
第10話 「白シャツ」と「白ダイヤ」にご注意。
第9話 初詣
第8話
第7話 日本の色
第6話 オリンピック随想
第5話 お正月に想う
第4話 ブルーダイヤ、高価とは聞いておられるでしょうがどれほど高価なのか・・・
第3話 同じ赤でもピンクダイアとルビーではかなり色に違いがあります・・・
第2話 新しい「誕生ダイアモンド」なるものを設定・・・!!
第1話 『fantasy』で『fantastic』な『fancy world』へ御案内。