◇◆ ファンシー ストーリー第12話 ◆◇ |
立春から2週間あまり・・・、 |
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ダイヤモンドのキラキラ感は当然ながら冬よりも春がお似合い、 人それぞれ好みも違いましょうが、桜色のピンクや菜の花のような黄色、そして若葉のようなグリーンイエロー等など、春を形容するダイヤモンドには事欠きませんね。 東西の横綱は言わずもがな、カラーダイヤはピンクに始まりピンクに終わる、みたいな感じが最近ありまして、もちろんFancy Pinkよりも彩度の高いIntense PinkやVivid Pinkの方が綺麗に決まっておりますが、それらは値段もそこそこ、それならばお買い得なFancy Pink、Fancy Purplish Pinkで、ということだと思います、これらのグレードが付いているものは常に引く手数多、在庫不足という現状であります。 Green 系も春と言わず年がら年中人気商品ですけども、やはり暖かくなりますとこれまで見向きもしなかった人でもフッと手に取ってくれたりする、気分というのは恐ろしいものです。 Light Pinkが何故こんなに高番付なのか、不思議に思われる方も多いかと。 ピンクダイヤのイメージでしょうね。 ウッキーも大好きなのですが、ハラハラするような可憐さが散ってしまいそうな桜を連想させます。そして、Lightゆえに暗さがない、春の日のキラキラしたような陽射し、そんなふうに感じられるのです。 ブルーダイヤですが、これも安ければね、そしてピンクのようにたくさんあれば『綱を張る』ことは間違いないのですが、少なくて高い! また、高くてもいいから・・と言う方もあまりに淡いFancy Blueの素顔を見て躊躇してしまうのが実情のようです。けれども、どういう訳か春になると注文が増えてくるのです、花とのコントラスト、これが綺麗にイメージされるのではないでしょうか。 オレンジのような柑橘系は秋の色という雰囲気ですが、“春先になって元気を出そう”、そんな気持ちになれるような色なんですな、それにまた、どういうわけか春の紫外線で綺麗な色が出る、そのあたりが人気の秘密かと思います。 春、三月をイメージする時にどうしても忘れられないメロディー、歌詞というのがありますね。 ウッキーの世代ですとやはり『なごり雪』、もう30年近く前になるのでしょうね、伊勢正三が作詞作曲、イルカが歌ってヒットしました。 何と言っても詞が素晴らしい、淡い雪が舞い落ちる駅のホームと若い二人、画像が瞬時に頭の中で拡がるのは言うまでもないことですが、あの短い詞の中に彼と彼女のストーリーが凝縮されていて、思わずその前後のことまで想像してしまうのはウッキーだけではありますまい。伊勢氏の鋭く柔らかく繊細な感性は、毎年三月になってラジオからイルカの歌声が聞こえてくる度にこれから先も長く賞賛されることでありましょう。 伊勢正やんの研ぎ澄まされた芸術性は疑うべくもありませんが、4半世紀以上の時が経過してなお多くの人に訴えかけるものがあるというのは、彼が『なごり雪』の中に自らの体験と心情をリアルに綴ったからではないでしょうかね、絶対そうに違いないと思います。 さて、正やんのような感性をウッキーに求めるのは全く不可能ですけれど、ストーリー性に富んだ正やんの詩が普遍でいつまでも愛されるように、愛されるダイヤモンドにはそれ相応のストーリーがある、ということを皆さんはご存知でしょうか。 『なごり雪』のようなわけにはゆきませんが、2,3年前から最近にかけて販売した価値あるダイヤモンドの話を少々・・・。 (なお、文中に登場するダイヤのグレーディングはAGTのものです。) まず下の画像をご覧になってください。 RedとVivid Pinkなのですが、どちらがどっちだと思います? |
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弊社HPの読者の方々はいろんな意味でハイレベルですから、ほとんどの方には察していただけていると思いますが、念のために、 向かって左側はFancy Vivid Purplish Pink 右側がFancy Purplish REDなのです。 昔は良かった・・なんて言うつもりはサラサラございませんが、かつてのVivid Pinkはこんなだったのですね、まさにSuper Vividや! REDと比べて何の遜色もない! 見ようによっては左側の方がREDっぽいですし、何人かの方は“赤は左”(つまらんしゃれを言うてるつもりはないのですが)と思ってくれたに違いないと確信します、ウッキーだって恐らく悩んだことでしょう。 REDのお話ではございません、ヴィヴィドピンクのお話です、念のため。 2001年の12月の買い付け商品、画像のものは0.144crtのSI2、同時に10個ほど同カラーグレードのモノを買っておりますがこれが頭一つ抜けておりました。 いずれにしましても、Vivid Pinkはその頃日本国内になんぼも入って来てなかったと記憶しておりますし、ウッキーが初めて買ったVivid Pinkでございました。 この何年も前からカラーダイヤに染まっておりましたから、何故この時が初めてだったのかと自分でも不思議に思えてこないでもないのですが、多分それまでもチャンスは結構あったに違いないでしょう、しかしながら買い付け商品はFancy Pink中心で、と言いますのはFancy Pinkがあれば十分であったし、その下のグレードであるFancy Light PinkやFancy Brownish Pinkも良い値段で売れましたから、わざわざ高いリスクと金額を払ってまでIntenseやVividを扱う必要はなかったということだと思います。ところが、急にArgyleからのピンクダイヤ供給量が減ってしまいましてね、Fancy Pinkの絶対量が不足、毎月の売上を維持していくためにはハイグレードなモノまで売買せざるを得なくなったと言う訳なのです。 それまではIntenseが最高のグレードと思っておりましたからVividなんてよもや自分自身が買い付けるなんて夢にも思わなかったのですが、AntwerpのSの事務所でこの商品を見た瞬間に『これがVividや、絶対に!』と確信しましたね。ご覧のように、クールに燃えるような赤紫です、グレードは全く問題がない、当然ですね、最近グレーディングされたAGTのRED(右側の画像)と見分けがつかないほどなのですから。当時、私を含めた日本人ダイヤモンドディーラーがIntenseさえも良く判っていなかったとは言え、圧倒的な格の違いは見紛いようがない。しかし値段がね、とてつもない高さ! こんな時のバイヤーは孤独です。相談するにも過去のデータがほとんどない商品、日本に電話して聞いたところでVividを知っていそうな奴は多分皆無、れいのBelieve meじゃないけれど、ホンマそんなユダヤ人の言葉でも信じとかないと仕方がないような状況でございました。ウッキー異例の長考、2時間くらいの間でしょうか、ああでもないこうでもないと思いながらこのVividを眺めておりましたなあ。 それで、最後いったい何が決め手になった? Argyleのブローカーが持って来た商品なのですが、そいつの表情が『お前には売りこなせまい』と言っているような気がしましてね、それに対する大いなる挑戦?!とでも言っておきましょう。 Lord of The Rings、ヴァレンタインデーの日に封切られたそうですが、ご覧になった方も多いかと。 |
Fancy Vivid Blue VS2 0.153crt REDよりも希少なのがVivid Blueなんです。 |
ウッキーはこれまでにたったの3つしか売買しておりません。 これは二つ目のものだったのですが、何故これが一番印象深いのかと申しますと、 青が迫り来る、というような気持ちにさせられましたし、写真撮影時にカメラもそのように反応したのです。 写真をご覧になって、ハートの形が歪(いびつ)じゃないかと思う方も多分いらっしゃるでしょう。ところが事実はそうではない、確かにプロポーション抜群ではないですが普通の体型、撮影の角度が真正面からずれているのでこのように見えるのです。正確に言いますと、カメラのレンズをややハートの先端方向にずらし、なおかつやや左側から撮影したということなのです。 Why? ほぼ真正面からの画像は、青の強い照り返しで実際の色が出なかったのです。 いやホンマ、このダイヤの持つパワーを実感しました。 もうひとつ印象深いのはAntwerpのSの言葉。 このような商品は買付けの時にタイミングよくあるというようなものではありませんから、常々Sに『あったら直ぐに連絡しろよ』と言い含めてあるのですが、彼がこれを見つけてTELしてきた時の言葉は今でもよく覚えております。 “So beautiful !!!” “Believe me”ではなくて“So beautiful”、 これを100連発くらいしておりました。 彼はわりと慎重と言いますか、だいたいどんな商品でもウッキーよりも厳しいグレーディングをするのです。そんな奴が言うのだから間違いないだろうと見ずに買い決めたウッキーでございました。 ああ、Fancyやねえ。 |
ものの本によりますと、ハリーさんはこのダイヤをハロウィーンの前日に手に入れたそうで、見事な色を印象付けるため“パンプキン”と名付けたとか。 アメリカのカボチャちゅうのは変な色やねえ、日本のカボチャがこんな色やったら子供たちはますます食べんようになるな、と言いつつも、 そして左は“UKIパンプキン”な〜んてね、Fancy Deep Orange 0.504crt SI2 、ウッキーが先月扱った商品です。 Vivid, Intense, Deep、どのような彩度でもAGT or GIAで所謂ピュア(純色)Orangeのグレーディングがされたものはごく最近までこれら二つ以外に知りませんでした。 真昼の太陽がホンマに赤や黄色に照っていたらかなり怖いと思いますが、♪真っ赤に燃える太陽だから・・・という古い歌もありました、また、徹夜の仕事明けで黄色く見える太陽を拝んでる方もいらっしゃるに違いない。照っている太陽に色は見えませんが、子供の頃、太陽を描けばREDかOrangeかYellowかのどれか、あるいはそれらを混ぜて色を付けたことと思います。 さてこのDeep Orange、ウッキーの輸入品ではなくて近所の輸入屋仲間からの仕入れ、しかも世間話のついでという感じで見せてくれた商品だったです。たまたまその少し前に、とある刊行物で上のVivid
Orangeを見ておりましてね、『こんなようなものがあったらなあ・・』と夢想していたところにこれが来た! ピュアなOrangeの数百倍難しそうなのがピュアGreenです。 |
Fancy Vivid Green Yellow 0.510crt VVS2 |
Green系ダイヤというのは不思議でね、いろいろと二つ名を頂戴しておりますモノもある。 さて、当“業界人”というのはホンマ軟弱、お前ら骨あるんか、と言いたくなる奴のオンパレードなのですが、時々面白いことを言うオッサンに巡り合える、独特のフレイズを持っているオッサンです。 今回登場したダイヤの現保有者の皆様、ご協力ありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げますとともに、伊勢正やんのような鋭いタッチで皆様のダイヤを描写できませんでしたこと深くお詫び申し上げます。 今年は閏年ですが、2月は毎年とても短く感じませんか。 |
◆ Back Number ◆ | |
第20話 | UKIカラーで綴った枕草子 |
第19話 | 古今和歌集ダイヤモンド語訳 |
第18話 | 2006W杯 × Fancy Color |
第17話 | That's Baseball |
第16話 | トリノの余韻 |
第15話 | “The Aurora butterfly of Pease” |
第14話 | Fancy June ... |
第13話 | ウッキー夜話 |
第12話 | 『春のダイヤ人気番付』 |
第11話 | 2003年 南船場の秋 |
第10話 | 「白シャツ」と「白ダイヤ」にご注意。 |
第9話 | 初詣 |
第8話 | 秋 |
第7話 | 日本の色 |
第6話 | オリンピック随想 |
第5話 | お正月に想う |
第4話 | ブルーダイヤ、高価とは聞いておられるでしょうがどれほど高価なのか・・・ |
第3話 | 同じ赤でもピンクダイアとルビーではかなり色に違いがあります・・・ |
第2話 | 新しい「誕生ダイアモンド」なるものを設定・・・!! |
第1話 | 『fantasy』で『fantastic』な『fancy world』へ御案内。 |